改定博物館法の施行にあたり、社全協が見解を発表しました

博物館法の一部を改正する法律」(令和4年法律第24号)施行にあたっての見解-地域で博物館の自由と自治を保障する登録制度の基準策定と運用を求める

2023 年 3月29日
社会教育推進全国協議会常任委員会

 2022年4月15日に公布された「博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)」(以下、改正博物館法)を受け、2023年2月10日に「博物館法施行規則」(以下、改正施行規則)が改正・公布されました。改正博物館法および改正施行規則は、同年4月1日に施行を迎えます。
 改正施行規則第3章「博物館の登録に係る基準を定めるに当たつて参酌すべき基準」では、改正博物館法第2章「登録」第13条「登録の審査」第2項の規定により、新たに文部科学省で定める参酌基準が明らかになりました。2023年3月現在、この参酌基準を受け、改正博物館法第13条第1項第2号から第4号の規定により、都道府県・指定都市教育委員会では、新たに博物館の登録に係る基準(以下、登録基準)が策定されているところです。
 私ども社会教育推進全国協議会常任委員会では、住民の学習・文化芸術活動、学芸活動の自由と多様性を保障する博物館の自由を求め、2022年5月13日に「『博物館法の一部を改正する法律』(令和4年法律第24号)に対する見解」をまとめました。改正博物館法による新しい登録制度の基準策定と運用にあたっては、上記「見解」を再確認し、また「博物館の社会教育施設としての役割を尊重」(第208国会衆議院・参議院附帯決議)する観点から、次の事柄について特段の配慮を強く求めます。

(1)教育委員会が登録基準を策定するにあたって
 文部科学省が定める改正博物館法第13条第2項の「博物館の登録に係る基準を定めるに当たつて参酌すべき基準」は、あくまで参酌基準です。
 登録基準は、改正博物館法第13条第1項を受けて、教育委員会が自治的に策定すべきものです。地方教育行政の原則に照らせば、基準策定の一連のプロセスを含め、博物館の館長、学芸員はもとより、住民等に公表し、内容的に検討されていく専門的かつ民主的な手続きを十全に保障していくことが求められます。
 各都道府県・指定都市教育委員会においては、今後も登録基準の策定、改善や見直しにあたって、各博物館や博物館活動に取り組む住民等からの意見を尊重し、検討することができる機会や手立てを確保することを求めます。

(2)教育委員会が登録制度を運用するにあたって
 改正博物館法第13条第3項、第18条「勧告及び命令」、第19条「登録の取消し」に定める「博物館に関し学識経験を有する者」については、文化庁の委託を受け(公財)日本博物館協会が2023年2月1日に提案したアドバイザリーボード等を活用する以前に、各々の教育委員会が自主的かつ自治的に選定すべきものです。選定の一連のプロセスや選定理由は、公表される必要があります。
 そして、登録の審査、勧告及び命令、登録の取消しを実施する際は、その一連のプロセスも公表された運用とすることが不可欠です。その際、文化庁は2022年5月20日の文化審議会第4期博物館部会(第2回)の「登録・指定に関する留意事項(案)」において「必ずしも合議体(委員会等)の形式をとる必要はない」としていますが、新しい登録制度が博物館活動の在り方に大きな影響を与え得ることを考慮し、審査の過程、勧告、命令等の運用にあたっては、当該博物館の館長、学芸員や社会教育において博物館活動に取り組む者を含めた合議体(委員会等)によって、民主的かつ専門的に検討する仕組みや手立てを整えることを求めます。

(3)博物館の設置者が登録を申請するにあたって
 博物館を設置する者においては、改正博物館法第11条「登録」、第12条「登録の申請」により、登録を受けようとする際は、博物館が社会教育施設であることの要件を確保し、当該博物館の館長、学芸員はもとより、利用者及び地域住民の意見を反映させる機会を持つ等の努力が求められます。
 とりわけ公立博物館の場合、教育委員会においては社会教育委員の会議や住民の参画を基調とする博物館協議会において、その他の設置者においても博物館協議会等において協議と承認を申請の前提とする等、住民の意見を反映する制度を十全に活用した運用を求めます。

 

※見解(PDF版)はコチラ